第3章 着手金及び報酬金
第1節 民事事件
- 民事事件の着手金及び報酬金の算定基準
- 第10条 本節の着手金及び報酬金については、この基準に特に定めのない限り、着手金は事件等の対象の経済的利益の額を、報酬金は委任事務処理により確保した経済的利益の額をそれぞれ基準として算定する。
- 経済的利益ー算定可能な場合
- 第11条 前条の経済的利益の額は、この基準に特に定めのない限り、次のとおり算定する。
1 金銭債権は、債権総額(利息及び遅延損害金を含む。)
2 将来の債権は、債権総額から中間利息を控除した額
3 継続的給付債権は、債権総額の10分の7の額。ただし、期間不定のものは、7年分の額
4 賃料増減額請求事件は、増減額分の7年分の額
5 所有権は、対象たる物の時価相当額
6 占有権、地上権、永小作権、賃借権及び使用借権は、対象たる物の時価の2分の1の額。ただし、その権利の時価が対象たる物の時価の2分の1の額を超えるときは、その権利の時価相当額
7 建物についての所有権に関する事件は、建物の時価相当額に、その敷地の時価の3分の2の額を加算した額。建物についての占有権、賃借権及び使用借権に関する事件は、前号の額に、その敷地の時価の3分の2の額を加算した額
8 地役権は、承役地の時価の2分の1の額
9 担保権は、被担保債権額。ただし、担保物の時価が債権額に達しないときは、担保物の時価相当額
10 不動産についての所有権、地上権、永小作権、地役権、賃借権及び担保権等の登記手続請求事件は、第5号、第6号、第8号及び前号に準じた額
11 詐害行為取消請求事件は、取消請求債権額。ただし、取消される法律行為の目的の価額が債権額に達しないときは、法律行為の目的の価額
12 共有物分割請求事件は、対象となる持分の時価の3分の1の額。ただし、分割の対象となる財産の範囲又は持分に争いのある部分については、争いの対象となる財産又は持分の額
13 遺産分割請求事件は、対象となる相続分の時価相当額。ただし、分割の対象となる財産の範囲及び相続分について争いのない部分については、その相続分の時価相当額の3分の1の額
14 遺留分減殺請求事件は、対象となる遺留分の時価相当額
15 金銭債権についての民事執行事件は、請求債権額。ただし、執行対象物件の時価が債権額に達しないときは、第1号の規定にかかわらず、執行対象物件の時価相当額(担保権設定、仮差押等の負担があるときは、その負担を考慮した時価相当額) - 経済的利益算定の特則
- 第12条 前条で算定された経済的利益の額が、次の各号の一に該当するときは、経済的利益の額を、紛争の実態若しくは依頼者の受ける経済的利益の額、又は、手数料額、に相応するまで増額することがある。
a 請求の目的が解決すべき紛争の一部であるため、前条で算定された経済的利益の額が紛争の実態に比して、明らかに小さいとき。
b 紛争の解決により依頼者の受ける実質的な利益が、前条で算定された経済的利益の額に比して、明らかに大きいとき。
c 算定された経済的利益に比し、事件処理に要する法律事務が困難或いは煩雑であるとき。 - 経済的利益ー算定不能な場合
- 第13条 第11条により経済的利益の額を算定することができないときは、基準額を800万円とし、事件等の難易、軽重、手数の繁簡及び依頼者の受ける利益等を考慮して、増減額する。
- 民事事件の着手金及び報酬金
- 第14条 訴訟事件(手形、小切手訴訟事件を含む)、非訟事件、家事審判事件、行政審判等事件及び仲裁事件の着手金及び報酬金は、この基準に特に定めのない限り、経済的利益の額を基準として、それぞれ次表のとおり算定する。
経済的利益の額 着手金 報酬金 300万円以下の部分 8% 16% 300万円を超え3,000万円以下の部分 5% 10% 3,000万円を超え3億円以下の部分 3% 6% 3億円を超える部分 2% 4%
3 前2項の着手金は、10万円を最低額とする。 - 調停事件及び示談交渉事件
- 第15条 調停事件及び示談交渉(裁判外の和解交渉をいう。以下同じ)事件の着手金及び報酬金は、この基準に特に定めのない限り、それぞれ前条第1項及び第2項又は第18条第1項及び第2項の各規定を準用する。
2 示談交渉事件から引き続き調停事件を受任するときの着手金は、この基準に特に定めのない限り、前条第1項及び第2項又は第18条第1項及び第2項の各規定により算定された額の2分の1とする。
3 示談交渉事件又は調停事件から引き続き訴訟その他の事件を受任するときの着手金は、この基準に特に定めのない限り、前条第1項及び第2項又は第18条第1項及び第2項の各規定により算定された額の2分の1とする。
4 前3項の着手金は、10万円(第18条の規定を準用するときは5万円)を最低額とする。 - 契約締結交渉
- 第16条 示談交渉事件を除く契約締結交渉の着手金及び報酬金は、経済的利益の額を基準として、次表のとおり算定する。
経済的利益の額 着手金 報酬金 300万円以下の部分 2% 4% 300万円を超え3,000万円以下の部分 1% 2% 3,000万円を超え3億円以下の部分 0.5% 1% 3億円を超える部分 0.3% 0.6% - 督促手続事件
- 第17条 督促手続事件の着手金は、経済的利益の額を基準として、次表のとおり算定する。
経済的利益の額 着手金 報酬金 300万円以下の部分 4% 8% 300万円を超え3,000万円以下の部分 2.5% 5% 3,000万円を超え3億円以下の部分 1.5% 3% 3億円を超える部分 1% 2%
3 督促手続事件が通常訴訟に移行したときの着手金は、第14条の規定により算定された額と前2項により算定された額との差額とし、その報酬金は、第14条の規定を準用する。
- 離婚事件
- 第18条 離婚事件の着手金及び報酬金は、次表のとおりとする。
離婚事件の内容 着手金及び報酬金 離婚調停事件又は離婚交渉事件 それぞれ20万円以上50万円以下 離婚訴訟事件 それぞれ30万円以上60万円以下
3 離婚調停事件から引き続き離婚訴訟事件を受任するときの着手金は、第1項の規定による離婚訴訟事件の着手金の額の2分の1とする。
4 前3項において、財産分与、慰謝料など財産給付を伴うときは、財産給付の実質的な経済的利益の額を基準として、第14条又は第15条の規定により算定された着手金及び報酬金の額を加算する。
- 境界に関する事件
- 第19条 境界確定訴訟、境界確定を含む所有権に関する訴訟その他境界に関する訴訟の着手金及び報酬金は、次のとおりとする。
着手金及び報酬金 それぞれ30万円以上60万円以下
3 境界に関する示談交渉事件から引き続き調停事件を受任するときの着手金は、第1項の規定による額又は第2項の規定により算定された額の、それぞれ2分の1とする。
4 境界に関する調停事件又は示談交渉事件から引き続き訴訟事件を受任するときの着手金は、第1項の規定による額又は第2項の規定により算定された額の、それぞれ2分の1とする。
- 借地非訟事件
- 第20条 借地非訟事件の着手金は、借地権の額を基準として、次のとおりとする。
借地権の額 着手金 5,000万円以下の場合 20万円以上50万円以下 5,000万円を超える場合 前段の額に5,000万円を超える部分の0.5%を加算した額
a 申立人については、申立が認められたときは借地権の額の2分の1を、相手方の介入権が認められたときは財産上の給付額の2分の1を、それぞれ経済的利益の額として、第14条の規定により算定された額
b 相手方については、その申立が却下されたとき又は介入権が認められたときは、借地権の額の2分の1を、賃料の増額又は財産上の給付が認められたときは、賃料増額分の7年分又は財産上の給付額を、それぞれ経済的利益として、第14条の規定により算定された額
3 借地非訟に関する示談交渉事件から引き続き調停事件を受任するときの着手金は、第1項の規定による額の2分の1とする。
4 借地非訟に関する調停事件又は示談交渉事件から引き続き借地非訟事件を受任するときの着手金は、第1項の規定による額の2分の1とする。
- 保全命令申立事件等
- 第21条 仮差押及び仮処分の各命令申立事件(以下「保全命令申立事件」という。)の着手金は、第14条の規定により算定された額の2分の1とする。ただし、審尋又は口頭弁論を経たときは、同条の規定により算定された額の3分の2とする。
2 第1項の手続のみにより本案の目的を達したときは、第14条の規定に準じて報酬金を算出する。
3 保全執行事件は、その執行が重大又は複雑なときに限り、保全命令申立事件とは別に着手金及び報酬金を定めるものとし、その額については、次条第1項及び第2項の規定を準用する。
4 第1項の着手金及び第2項の報酬金並びに前項の着手金及び報酬金は、本案事件と併せて受任したときでも、本案事件の着手金及び報酬金とは別に定めることがある。
5 保全命令申立事件及び保全執行事件の着手金は、10万円を最低額とする。
- 民事執行事件等
- 第22条 民事執行事件の着手金は、第14条の規定により算定された額の2分の1とする。
2 民事執行事件の報酬金は、第14条の規定により算定された額の4分の1とする。
3 民事執行事件の着手金及び報酬金は、本案事件に引き続き受任したときでも、本案事件の着手金及び報酬金とは別に定めることがある。ただし、着手金は第14条の規定により算定された額の3分の1とする。
4 執行停止事件の着手金は、第14条の規定により算定された額の2分の1とする。ただし、本案事件に引き続き受任するときは、同条の規定により算定された額の3分の1とする。
5 前項の事件が重大又は複雑なときは、第14条の規定により算定された額の4分の1の報酬金を求めることがある。
6 民事執行事件及び執行停止事件の着手金は、5万円を最低額とする。
- 倒産整理事件
- 第23条 破産、特別清算及び会社更生の各事件の着手金は、資本金、資産及び負債の額、関係人の数等事件の規模並びに事件処理に要する執務量に応じて定め、それぞれ次の額とする。ただし、下記各事件に関する保全事件の弁護士報酬は、下記着手金に含まれる。
1 事業者の自己破産事件 50万円以上
2 非事業者の自己破産事件 20万円以上
3 自己破産以外の破産事件 50万円以上
4 特別清算事件 100万円以上
5 会社更生事件 200万円以上
2 前項の各事件の報酬金は、第14条の規定を準用する。この場合の経済的利益の額は、配当額、配当資産、免除債権額、延払いによる利益及び企業継続による利益等を考慮して算定する。ただし、前項第1号及び第2号の事件は、依頼者が免責決定を受けたときに限り、報酬金を定めることがあるものとする。
3 自己破産申立事件を受けないで免責申立事件(免責異議申立事件を含む。)のみを受任した場合の着手金については、第1項第2号の規定により算定された額の2分の1とする。この場合の報酬金については前項の規定を準用する。
- 民事再生事件
- 第24条 民事再生事件の着手金は、資本金、資産及び負債の額、関係人の数等事件の規模並びに事件処理に要する執務量に応じて定め、それぞれ次の額とする。ただし、民事再生事件に関する保全事件の弁護士報酬は、下記着手金に含まれる。
1 事業者の民事再生事件 200万円以上
2 非事業者の民事再生事件 30万円以上
3 小規模個人再生事件及び給与所得者等再生事件 20万円以上
2 依頼者が再生手続開始決定を受けた後民事再生手続が終了するまでの執務の対価として、執務量及び既に受けている着手金又は報酬金の額を考慮した上で、月額で定める弁護士報酬を定めることがある。
3 民事再生事件の報酬金は、第14条の規定を準用する。この場合の経済的利益の額は、弁済額、免除債権額、延払いによる利益、及び、企業継続による利益、等を考慮して算定し、報酬金の具体的な算定にあたっては既に受領している前項の月額で定める弁護士報酬の額を考慮する。ただし、報酬金は依頼者が再生計画認可決定を受けたときに限りこれを定める。
4 民事再生法第235条に基づく免責申立事件(免責異議申立事件を含む)の着手金は、第1項第3号の規定により算定された額の2分の1とする。この場合の報酬金は前項の規定を準用する。
- 任意整理事件
- 第25条 任意整理事件(第23条第1項又は前条第1項に該当しない債務整理事件)の着手金は、資本金、資産及び負債の額並びに関係人の数等事件の規模に応じて定め、それぞれ次の額とする。
1 事業者の任意整理事件 50万円以上
2 非事業者の任意整理事件 20万円以上
2 前項の事件が清算により終了したときの報酬金は、債務の弁済に供すべき金員又は代物弁済に供すべき資産の価額(以下「配当源資額」という)を基準として、次の各号の表のとおりとする。
a 弁護士が債権取立、資産売却等により集めた配当源資額につき
500万円以下の部分 15% 500万円を超え1,000万円以下の部分 10% 1,000万円を超え5,000万円以下の部分 8% 5,000万円を超え1億円以下の部分 6% 1億円を超える部分 5%
b 依頼者及び依頼者に準ずる者から任意提供を受けた配当源資額につき5,000万円以下の部分 3% 5,000万円を超え1億円以下の部分 2% 1億円を超える部分 1%
d 第1項の事件の処理について、裁判上の手続を要したときは、前2項に定めるほか、本節の規定により算定された報酬金を定めることがある。
- 行政上の不服申立事件
- 第26条 行政上の異議申立、審査請求、再審査請求その他の不服申立事件の着手金は、第14条の規定により算定された額の3分の2とし、報酬金は、同条の規定により算定された額の2分の1とする。ただし、審尋又は口頭審理等を経たときは、同条の規定を準用する。
2 前項の着手金は、10万円を最低額とする。