第11回
コロナと家族
新型コロナウィルス(COVID-19)が猛威を振るっています。ユヴァル・ノア・ハラリ著『ホモ・デウス』(河出書房新社)の第1章は、われわれ3000年紀(西暦2001年~3000年)においてはじめて人類は、これまで常に取り組むべきことの上位リストを占めていた飢餓・疫病・戦争から解放された(すっかり解決されたわけではないものの、理解も制御も不可能な自然の驚異ではなくなり、対処可能な課題に代わった)、という内容から始まります。しかし、今回の新型コロナウィルスは、SARSやMARS、エボラ出血熱の時のようにはうまくいきそうにありません。当面は新型コロナウィルスという疫病が、人類の取り組むべき課題の上位リストにあがりそうです。
新型コロナウィルスの影響で、日常生活に大きな制約が課されるようになりました。不要不急の外出自粛、学校の休校、卒業式等の取りやめ等々です。法曹界でいえば、緊急事態宣言の対象とされた大阪(大阪地裁・大阪高裁)で予定されていた民事裁判の期日(5月6日までのもの)は、全て取り消しとなりました。
私が学校の休校で思い出すのは阪神大震災です。震災当時、私は小学校5年生で、神戸市北区に住んでいました。1月17日の震災の日から、結局一度も学校に行くことなく新学期の始業式を迎えました。楽しみにしていたスキー合宿(学校行事)もなくなりました。6年生の卒業式が実施されたのか否かも覚えていません。私が覚えているのは、新学期の始業式の日にたくさんの転入生がいたことです(神戸市北区は震災の被害が割と小さく済んだため、被害の大きかった地区から引っ越して来られた方がたくさんおられました)。
その震災の日の出来事として今でも鮮明に覚えているのが、震災をきっかけとして両親の喧嘩がおさまったことです。私の両親はよく喧嘩をしていました。喧嘩をすると、お互い口もきかず、私や弟に対するあたりも強くなり、家庭内の空気が殺伐としたものになります。私は本当にそれが嫌でした。
震災の日も両親は喧嘩の最中でした。数日前から口を利かない状態だったと思います。それが震災をきっかけに、喧嘩を止め、お互い口を利くようになりました。私は、余震の恐怖におびえつつも、地震のおかげで両親の喧嘩が終わったと、地震に少しだけ感謝しました。変な話ですが、今でもこの時の気持ちを鮮明に覚えています。
今回の新型コロナウィルスの影響により、外出自粛、学校は休校、仕事はテレワークとなると、家族と家で過ごす時間が必然的に増えます。全世界的にDV被害が急増しているというのは、大変悲しいことです。仕事に集中できず進まないのは、テレワークのせいではなく、コロナ禍のせいです。緊急事態宣言が出るような状況なのですから、仕事が進まないのはしょうがないと割り切って、家族との時間を大切にされてはいかがでしょうか。
コロナ禍が終息した時点で、振り返ってみればコロナも悪いことばかりではなかったと思えるような、「ピンチ即チャンス」の精神が、今は必要のように思います。
荒牧潤一 2020.4.15
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